世界最強のビール

酒:tonoto

最もアルコール度数の高いビールをご存知だろうか。ベルギーには10%を超えるビールも珍しくないが、かの地の最高度数は12%。そちらよりもイギリスやドイツの方が、意外にもアルコール度数の高いビールは多い。

かなり以前は、ドイツの「EKU28」(14%)と言われていた。その後、スイス(現在はオーストリア)の「サミクラウス」(15%)がギネスブックにも登録され、長らくこれが「世界最強のビール」とされていた。ところが、アメリカのサミュエル・アダムズから17%の「トリプルボック」が出て、その座を奪った。サミュエル・アダムズは、2000年に「ミレニウム」(20%)、2002年に「ユートピア」(25%)を出し、「最強」の名をほしいままにしていた。

ところがこの日本から、アルコール30%のビールが出た。北海道は小樽にある北海道麦酒醸造(株)が、30%の「tonoto」を出したのだ。まさに「ギネスもの」(ビールだからね)の話題なのだが、イマイチ話題になっていないのはこの世界の裾野の狭さなんだろうか。ま、グチはともかく、実際に手に入れられたので、さっそく呑んでみた。

通常の5倍の麦芽を使用して、じっくり発酵させた後、雪温で凍詰め(ゆっくりと凍らせることにより、余分な水分と雑味を取り除く)、熟成させた冬の北海道ならではの製法です。

ビールを凍らせるとアルコールよりも水が先に凍るため、その水分(氷)を取り除くことでアルコール度を上げることができる。これを「アイスビール」という。一昔前に流行ったアイスビールの、本来の*1製造法である。

ちなみに「tonoto」はアイスビールではなくて、「バーレイワイン」として出されている。同時に、アルコール度数10%の「siro」、19%の「aka」も出ている*2

…とまぁ、前説はこのくらいにして、実際の味は。
案の定、泡立ちはほとんどない。色合いは透明なアンバー。アロマは、蒸留酒のようにアルコール香が強い。モルトの味が中心だが、ホップが入っているためなのか、モルトウィスキーほどの甘みはない。印象として芋焼酎のような柔らかな口当たり。フィニッシュはあまり長くなく、案外とドライ。「30%」の度数の高さはあまり感じない。サミュエル・アダムズのユートピアと比べて、全体的に丸い印象があった。

*1:あのブームのときに出ていたのは、1回凍らせはするが水を除去せずにまた戻すだけ、という製法のビールだった。

*2:そちらはまだ呑んでいない。