酒:ヱビス超長期熟成
理由:いらない。

2005年3月9日発売。昨年5月ネットで抽選販売され、過度アクセスによりサーバーがダウンしてしまったほどの人気を誇った伝説のビール*1が、期間限定ながらいよいよ一般発売。

(以下、自分のメモ代わりに書いているので、ビールに薀蓄垂らされるのが嫌な方は無視してください。)
まず目を引くのがその色。レギュラーのヱビスと比べるまでもなく、明らかに濃い色を持っている。カラーチャートは使っていないが、SRMでいえば5〜6はあるのではないか。バスペールエールくらい。泡まで赤みを帯びているほどだ。

アロマは、思ったよりもホップの香りがない。モルトの香り、というか醸造香が漂ってくる。そして味としては、とにかくモルトの甘さが際立つ。ホップの苦味は通常のヱビスと同じくらいのはずなのだが、甘さが前に出ているので意識しないと見逃してしまうくらいだ。6%というので、アルコールの甘さもあるのだろう。ボディはミディアム。例のたまり醤油の香りも微かにする。印象としては、もうボックの領域に差し掛かっている。

ヱビスドルトムンダー・スタイル」と、かのマイケル・ジャクソンは曰った。なにせ他のドルトムンダーを飲んだことがないので事の真偽はわからないのだが、このヱビスはどう考えても教科書的なドルトムンダーの範疇からは外れているだろう。

熟成とは炭酸ガスの溶解を進め、ビールにコクとまろやかさを与え、また清澄化する為に必要な工程です。ビールの場合、通常氷点以下(−1℃前後)の温度で、1ヶ月程度熟成されますが、「ヱビス 超長期熟成」は、通常ヱビスよりも麦芽使用量が多く、また約6%という当商品の特徴であるアルコール濃度にバランスの取れた味を達成する為にヱビスビールの約2倍の熟成期間をとりました。

長期熟成の目的はアルコール6%の達成のためと明記されているのが驚き。甘いのは麦芽の使用量が多いためだ。2ヶ月も熟成させたので、たまり醤油のような香りも発生している。倍の熟成期間の味の調整はさぞかし大変だったろう。着地は見事。

このビールは「ヱビスは苦い」と思い込んでいる*2ような人には、結構不評なのではないかと想像する。「熟成」とか「まろやか」という言葉である程度フォローできるだろうけど、苦味を期待した舌には甘さが際立ったビールだ。でも実は、それだけの甘みを支えるだけの苦味がある。それが心地よく、またヴァランスのよい味わいとなっている。

それにしても、甘さを高級感の象徴として使ったのは、昨今の日本のビールの味へのアンチテーゼなんだろうか。また「ヱビス」というブランドを使ってこれほどのビールを造るのは理解できるが、せっかくなのだから新しい高級ブランドとしてレギュラー化して欲しいものだ。

ちなみに瓶ではなく缶なのは、「残念ながら、熟成期間が長く、製造能力の関係で数量に限りがございます。より多くの皆様に手にとっていただくため、350ml缶のみの発売とさせていただきました。」http://www.yebisubar.jp/limited/himitsu_01.html とのこと。どうせ市場に出回る時間が少ないのだから、自分は缶でも構わないと思う。

*1:当然、買えなかった。誰もどんな味か書いてくれてない。

*2:ドイツのピルスナーと比べて飲むとよくわかるが、ヱビスは特に苦すぎるビールではない。むしろ軽やかな苦味だ。