芳樹が死んだ

通夜 5月27日(火)18時〜
葬儀・告別式 28日(水)12時〜13時
江古田斎場唯心堂
住所 練馬区小竹町1-61-1
(江古田駅北口より徒歩2分)

昨日はまったくネットに触らないでいたので知らなかったが、今朝、妹さんからのお電話で鈴木芳樹の訃報を知った。

大学1年生からの付き合いだから、充分旧友の間柄にはなるだろう。クラシック音楽が共通の趣味だったのが、最初の繋がりだったろうか。「大学生ともなるとこういうエキセントリックなヤツがいるんだな」というのが驚きだった。もっとも、彼ほどにエキセントリックな友人は他にできなかったが。島田荘司の小説の主人公、御手洗潔と石岡一巳のような関係だったように思う。

学食で箸を指揮棒代わりに「ダ〜ララ〜〜」などと歌いだしたり、「エロティシズムとはなぁ!」と公道で大声で演説をはじめたり、発車までしばらく待っている電車の中で不意に静まり返った静寂に耳を傾け「今のは『4分33秒』の名演だったね」と嬉しそうにしたり、およそ大学生らしくないひとコマばかりが思い出される。

新本格」「フリッパーズ・ギター」「インターネット」は、オレがやつに紹介したものなのだが、彼から与えてもらったことはその何十倍のものがあって、とてもここには枚挙できない。その数ある中でも最後の方に教えてもらったこの「はてな」で、まさか追悼文もどきを書くハメになるとは。僕を覆いつくす悪い冗談のようだ。

「友人が死ぬ」なんて体験を、まだしたことがない。そういう体験は、どういう風に自分の心境に変化をもたらすものなのか。親が死ぬのとはどう違うのか、愛するペットが死ぬのとはどう違うのか。そんな話をしてみたかった、当の本人が死んでしまったのでは、どうしようもない。

最近は大岡昇平論を書こうとしていたようだが、何を書こうとしていたのか。

「芳樹の訃報」と書いてはみたもののピンと来ない。http://d.hatena.ne.jp/yskszk/20080519トラックバックを読んでいても、エイプリルフールの日記を読んでいるかのようだ。やつが読んだらさぞかし面白がることだろうと思う。もしかして、今でも「死んで」いることに気づいていなんじゃないだろうか? せっかく日記のネタができたのに更新できねぇぜちきしょうめ、くらいに感じているんじゃないだろうか。


学生のころ、死などまったくリアリティのなかったころ、「葬式のときの音楽はなにがいい?」という他愛のない話をしたことがあった。マーラーの「大地の歌」なんてのは湿っぽくてヤダね、と話したのは覚えている。あぁでも、こんなに絶妙のシチュエーションも一生に(!)一度しかないではないか。「ベタすぎる」と嗤うなら嗤ってくれ。

第6楽章 「告別」より

Er stieg vom Pferd und reichte ihm den Trunk des Abschieds dar.
Er fragte ihn,wohin er fuhre
und auch warum,warum es muste sein.

Er sprach,seine Stimme war umflort:
Du,mein Freund,
mir war auf dieser Welt das Gluck nicht hold!

Wohin ich geh'? Ich geh',ich wand re in die Berge.
Ich suche Ruhe,Ruhe fur mein einsam Herz!

Ich wandle nach der Heimat,meiner Statte!
Ich werde niemals in die Ferne schweifen.
Still ist mein Herz und harret seiner Stunde!

Die liebe Erde alluberall bluht auf im Lenz und grunt aufs neu!
alluberall und ewig,ewig blauen licht die Fernen,
ewig,ewig,

友は馬を降り別れの杯を彼に差し出した
そして聞いた、どこへ行くのか
何故に、何故にそうしなければならぬのかと

彼は悲しみに曇った声で話した;
君、私の友よ
私はこの世で幸運に恵まれなかった!

どこへ行くかと? 私は行く、私は山に行くのだ
孤独な心の安らぎを、安らぎを求めて!

私は故郷に、私の居場所に向かう!
決して遠国にさすらいはしない
心静かにその時を待つのだ!

愛する大地は春になれば至る所で花咲き新緑に萌える!
至る所で永遠に、永遠に遥か涯まで青く輝く
永遠に 、永遠に